足を出しながら振りかぶる?
『剣道指導者研究室』掲示板に質問が入ってしまいまして、急遽これを先に仕上げなくてはならない必要性がでてきました。よそのサイトでも、基本指導についての書き込みをはじめる必要に迫られています。そこでまず、私の基本の原点になっている「足の運用」について書いておきたいと思います。
私の基本の原点にもなっている「足の運用」ですが、その骨子は、「振りかぶったときは足を前に出さない」です。 もう少し細かく説明すると(『剣道指導者研究室』からの転載&加筆ですが)、「振りかぶるときには足を出さず、それが頂点に達したところから左足の蹴りだしにより右足を前に進め、振り下ろしに転じた竹刀が打突部位に当たるにやや遅れて踏み込み、直後に右足の大腿直筋の緊張によって左足を引きつける」ということになります。 足の出し方ですが、意識としては右膝が先行するような感じです。右足も左足も足底の指の付け根でがっちりと床をつかむようにします。重心をグッと落とし、意識の上では足を床にめり込ませるように働かせます(ダウンバランス)。左足の蹴り出しによって、右足が前に押し出される感覚です。この時、足底(とくにつま先部分)が床から離れないように意識します。 床をとらえ重心が右足に移動すると同時に、右足の大腿直筋を使って左足を引っ張り込みます。
近年、審判で上は大学生の大会から、下は小学生の大会まで目にする機会があるのですが、跳躍早素振り(以下、早素振り)がおかしい学生・生徒・児童を多数見かけました。今年度インターハイで上位に上がった学校の生徒の早素振りも妙でした。 どのようにおかしいかというと、両足が同時に床から離れ、同時に床に着くのです(両足同時ジャンプ)。 本来の早素振りは、 2.右足が着地したときに面を打ち次いで左足が基本の足型(構えたときの足 3.振り上げながら、右足が床を蹴り左足を押し下げ 4.左足・右足の順で着地し、振りかぶりの動作が完了する 足の動きは、前進の時は「右足・左足」と着地し、後退の時は「左足・右足」の順で着地するのであって、けっして「両足同時ジャンプ」ではないはずです。
早素振りは、「左足蹴り出しの基礎」とか「左足引きつけの感覚」とか言われてきましたが、この技術が崩れようとしているわけです。
さらに、振りかぶったときに右足が宙に浮いてしまっていますから、安定が悪いですね。バランスよく床をつかんで遠くへ跳ぶことが不可能になります。 その点、「振りかぶりの時、両足を床に接している」やり方は、振りかぶりのときのバランスがよく、振り下ろしの方向と足(身体)が進む方向を完全に一致させることができるので、正しい姿勢で遠くへ踏み込むことが可能です。
私は故渡辺敏雄先生から小野派一刀流の手ほどきを受けましたが、その極意の「切り落とし」は、相手の後から発し、相手の切りかかる太刀を鎬ではじき飛ばし一拍子で切りつけるという豪胆な技です。この「切り落とし」をうまく使うためには、「振りかぶりながら足を出し」たのではまったく力が入らないのです。このあたりをどう考えたらいいのでしょうか?
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