新・剣道称号・段位審査規則に思う

(2000/04/15)

 2年前から検討が進められてきた全日本剣道連盟(以下、全剣連)の新しい「称号・段位審査規則」(以下、審査規則)がこの4月(平成12年)から施行されたのはすでにご存知のことと思います。これにつきましては、全剣連のホームページをご覧いただくか、『剣道時代4月号』には解説つきで掲載されておりますので、この一文をお読みになる前にぜひともご一読いただきたいと思います。

 今回の見直しについて、全剣連のホームページ中の「前文 称号・段位の見直しについて」という一文は、「運営側からの実施法方が一般的だった旧規定から、受審者側への配慮を目指したのが新規定です」と結んでいまが、本当にそうでしょうか?
 さらにここには「これまで曖昧であった称号と段位の性格を明確にした」「段位の基準を明確化した」と書かれています。しかし、審査規則第2章称号の審査を見ますと、

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(付与基準)
第8条
 称号は、錬士、教士、および範士とし、それぞれ次の各号の基準に該当する者に与えられる。
1 錬士は、剣理に錬達し、識見優良なる者
2 教士は、剣理に熟達し、識見優秀なる者
3 範士は、剣理に通暁、成熟し、識見卓越、かつ、人格徳操高潔なる者
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とあります。さらに、第3章段位の審査を見ますと、

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(付与基準) 第14条
 段位は、初段ないし八段とし、それぞれ次の各号の基準に該当する者に与えられる。
1 初段は、剣道の基本を修習し、技倆良なる者
2 二段は、剣道の基本を修得し、技倆良好なる者
3 三段は、剣道の基本を修錬し、技倆優なる者
4 四段は、剣道の基本と応用を修熟し、技倆優良なる者
5 五段は、剣道の基本と応用に錬熟し、技倆秀なる者
6 六段は、剣道の精義に錬達し、技倆優秀なる者
7 七段は、剣道の精義に熟達し、技倆秀逸なる者
8 八段は、剣道の奥義に通暁、成熟し、技倆円熟なる者
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とあります。『段位は「剣道の技術的力量(精神的要素を含む)」、称号は「これに加える指導力や、識見などを備えた剣道人としての完成度」を示すものとして、審査を経て授与されるものとする。』(前文 称号・段位の見直しについて)とありますが、これら規則の文言を読んで、明確な『錬士六段』像や『教士七段』『範士八段』像が浮かぶものでしょうか?

 むろん、剣道の技量や人間性などというものを具体的基準にできるわけありません。ただ、こうした文言上の表現の違いをもって、『現規程では、段位の基準が設けられておらず、審査員の経験則のみに頼っていた。公正かつ妥当な審査を行うためには、何らかの具体的基準が必要と思われる。段位の基準を明確にすることにより、審査員と受審者の双方に通じる、段位の客観的な価値判断が可能になる。』(前文 称号・段位の見直しについて)とするのはいかがなものでしょうか? あまりにも手前みそな考え方と言わざるを得ません。

 

 また、『前文 称号・段位の見直しについて』の見直し方策の大綱には、

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4.受審者の立場への配慮を深める
 受審者をふるいにかけるための審査にせず、審査を実力向上のための手段として効果あらしめるものとする。このため審査に関する情報の開示、受審者への伝達、指導などを進める。(以下略)
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とあります。ここの部分は実は一番大切なことではないかと考えます。称号・段位審査が全剣連の財源確保の一翼を担う重要な行事であることもわかりますが、これとて、受審者あってのことです。

「私はどういう点が足りなかったから落ちたのだろう?」
「7人の審査員のうち何点だったのかなぁ?」
「この先、どのような点に注意して稽古に取り組んでいったらいいのだろう?」

 高い受験料を払い、六段以上の審査では仕事を休み、はるばる飛行機や電車を乗り継いで審査会場までやって来る人もいます。そして、わずか数分の実技審査の後に延々と待たされ、合格者を模造紙に記入し掲示するといった大時代的な合格発表方法のみで結果を知らされます。

 むろん、剣道を修業する人たちですから落ちたとしても審査員や全剣連に不満を漏らしたり逆恨みするような方はいないでしょう。けれど、これら受審者の素直な疑問に回答できるような合否発表方法を考案していってほしいと考えてるのは私だけではないと思います。


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