足さばきについても、まだ、書き残しはあると思うのですが、とりあえず、手の方に進むことにいたしましょう。
握りはとても重要なものです。この握りが違ってしまったために、振りかぶりや打突の点であとあとたいへんな苦労をしょい込むことになりますから、私は基本指導において「足さばき」と「握り(構)」が導入時期に最も気を配るところです。
握りに入る前に考えなければならないことは、竹刀または木刀のサイズです。
私は、基本錬成を木刀でやらせておりましたので、低学年には剣道具屋さんに特別注文の木刀を造ってもらっていました。
大切なことは、長さと太さです。おおむね、床に垂直に立ててその子の腋の下くらいの長さが最適です。太さは、母指球(親指の付け根の掌の部分)と小指・薬指でしっかりと木刀をホールドできる太さです。竹刀を使わせる場合も、同じような目安にします。
ただ、竹刀の場合だと、柄の長さが問題になってきます。
右肘の内関節に柄頭を当てて竹刀を立て、肘を折って右手が握れる最長の場所が、その子の理想的な右手の位置になりますから、長すぎる柄皮は切って縫い直して使わせます。
この握り位置の測り方だと、木刀の場合はうまく合わないのですが、そこはある程度アバウトに考えています。握りの位置よりもむしろ、「握り方」の方が重要だからです。
また、竹刀の握りが太い場合は、鉋などで小さめに削ってやることも必要でしょう。
「握り方」の基本はシェイクハンドです。子供にはわかりにくいでしょうから、まず、両手をおヘソの前で合掌させます。その状態から右手を少し前に出し、左中指の先が右手の平の手首を離れたところで来たとき、軽く握らせます。
この形を覚えさせておいて、今度は木刀を握らせます。
左手の位置は、おヘソよりやや下で、およそ握り拳ひとつ分離して持たせます。低学年の場合、どうしても左の握りを体につけて楽をしがちですから、そこのところをしっかりと教えます。右手は、右肘が突っ張らないように、左脇には「紙をはさんでいて落ちないように」という意識をつけさせます。
握りのポイントは、
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1.小指・薬指・中指と母指球で握る
2.左手はしっかりと、右手は小鳥を握るような感じで
3.親指は下向き
4.親指と人さし指の付け根(股)が嶺の頂点に来るようにする
5.上から見て、親指と人さし指が作る「V字型」が確認できるよ
うにする
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です。
1ですが、親指と人さし指はフリーにしておくように教えます。気をつけなくてはいけないのが、竹刀に沿って人さし指を伸ばしてしまうもの。これは、危険ですのでやめさせるようにしなければいけません。
4は竹刀の場合は柄の縫い目に合わせるようにさせます。左手首を入れようとして、必要以上に左肩を上げてしまったり、左肘が突っ張ってしまうようになりがちなので、気をつけさせます。
初心の内はどうしても剣先が高くなりがちなので注意位が必要です。「水平よりやや高くし、自分の真っ正面に向ける」という漠然とした教え方でいいようです。「相手の方に向ける」とか「同じくらいの身長の人の喉の高さ」などといっても、始めたばかりの子供には構の高さを立体的に判断する材料も感覚もありません。
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