少々持論を述べさせていただきます.
自分は新陰系の古流ですのでその立場から剣道を看ますと,正中線の捉え方が
違う様に感じます.剣道では背骨を真直ぐ立てて正中線に添わせる事に疑問は
ないと思いますが,古流には猫背や肩をいなした背骨の横彎曲も多用されてい
ます.半身がに股の古流を蟹に,剣道を海老に例える事も可能です.
歌舞伎や浮世絵に見られますように江戸時代までは直立気を付けの姿勢とはかけ
離れた姿勢が普通でしたが,幕末の三大道場の隆盛の頃には直立の剣道式も確立
していた筈です.明治以降国策として奨励すべきが剣道であった大きな理由は,
この形が軍事教練と相性が好かったから.古流も御国の為にはと剣道の普及に協力
譲歩したのでしょう.
背筋を直立させ頭の後ろ迄振りかぶる剣道の場合,ややもすると腰の一点に負担の
掛かる危険もあると思われます.正しい正中線と振りを習得すれば決してそうなら
ない筈ですが.その点剣聖と称された方々,殊け遠くは高野佐三郎先生,近くは中倉清
先生のお姿には流儀を超えて正中線の美しさに感動させられます.剣道の方の目指す
べき境地は成る程こういうものかと思う次第です.
部外者の勝手な意見ですが,傍目八目という諺もありますので御容赦ください.