都立高校で弱小剣道部(でも、かわいい生徒たちなんですが)の指導をしているOgaと
申します。ウチでも似たようなことがありまして、
「熱がある」「自転車でコケた」「バイトがある」「伯父さんの家に遊びに行く」「部
長をやるのがイヤだ」
等々、生徒が好き勝手なことを言ってサボろうとするのは日常茶飯事です。面白い言い
訳もあって、つい笑ってしまうこともあるのですが。
生徒と接していて思うのは、「自分たちは恵まれた時代に稽古をしてきたんだなあ」と
いうこと。スポ根マンガ全盛で、みんなが「巨人の星」や「あしたのジョー」に親しん
で少年時代を過ごしてきましたから、運動部に所属してきつい練習に励むのなんか当た
り前。高校から大学にかけては「六三四の剣」の連載もあって、だいぶ励みになりまし
たっけ。
それに比べると今の子どもたちは、「刷り込み」が足りないせいか、自分の欲求がスト
レートに出てきますね。「忍耐」とか「自分を鍛える」とかっていうのは、あまり意識
にないんでしょう。でもまあ、それをなげいても仕方がありません。体調が悪いのがま
ったくの嘘でないのなら、にらみをきかせるのにも限界がありますから。
私は、生徒がコンディションの悪さを口にしたときは、ひと通り事情を聴きます。その
上で、「よく身体を休めなさい」と言うこともあれば、「試合で勝ちたいと言ったのは
君たちじゃないのか!」と叱ることもあります。あるいは、自分が高校時代、気弱にな
って退部しようとしたところを仲間に支えられた経験を語ることもあります。対応はそ
の時どきの生徒の様子で変わりますから、固定されたパターンがあるわけではありませ
ん。
ただ、私の意識の中に漠然とあるのは、生徒が部活動を「楽しい」「もっと参加したい」
と感じるためには、「進歩(向上)の欲求」と「調和の欲求」の両方を満たさなければ
ならないだろう、ということです。
日々の稽古のメニューが、いつもいつも同じで変化に乏しければ、今の生徒は飽きてし
まうでしょう。地道な反復練習の中で何かをつかみとるのは大切ですが、一定の時間を
「新しいことにチャレンジする」「ウチの学校の必殺技をつくる」「生徒のリクエスト
に応じる」などに使うと、少し様子が違ってくるのではないでしょうか。人数が欠ける
とみっともないですが、練習試合も時々は組むとよいと思います。また、「全日本選手
権のビデオを見る」「竹刀の分解・組み立て・手入れを完全にマスターする」「武道具
店めぐりをする」「剣道についてのペーパーテストをつくってみんなでやってみる」等、
幸い剣道にはさまざまな要素がありますから、身体を動かすこと以外にも、試みられる
ことはいくらでもあるはずです。
さらに、教員と生徒、あるいは生徒どうしの関係をつくるために、何かできることがあ
るかもしれません。「稽古や試合も楽しいけれど、稽古以外の先生や仲間との関係も楽
しい」となれば、コンディションのことでグズグズ言うことは減るはずです。
たとえば、私は生徒の剣道具が破損すると、ちょっとしたものなら自分で直してしまい
ます。甲手の手の内の穴をふさぐのに始まって、面布団の破れに革や布を張る、面アゴ
の内垂れが取れないよう補強する、垂れのへりの布テープがボロボロになったら、全部
クローム革で仕立て直す、いろいろやりました。専門店に修理に出すと、夏場は1ヶ月
戻ってこないこともありますから、生徒は喜びますね。あ、これは職人さんに教わった
りするのが大好きな私だからやることかもしれませんが。
あと、生徒どうしの共通の話題を増やす目的で、ウチの部には剣道マンガが多数そろえ
てあります。「六三四の剣」「しっぷうどとう」「バガボンド」は全巻あります。剣道
モノではありませんが、「ピンポン」もあります。毎年合宿にはマンガ持参でというの
がウチの恒例なんですね。
さて、長くなってしまいましたが、要はいろいろやってみましょう! ということです。
自分が楽しまなきゃ顧問なんてやってられませんよ(笑)。