段位制改革への一考察(2)

(少年段とアマチュア段の設置はいかがでしょうか? 2008/11/26)

 初段審査の一場面。かたや、小学校1年生から剣道を続けてきた中学2年生。かたや、大人になってから剣道を始めたいわゆる遅剣(おそけん)のお父さん。この二人が、直接立合わないまでも同じ審査会場で初段審査を受ける。幸いなことに両名とも合格したが、両者の剣道の差は歴然。小学校6年間と中学でみっちり1年間やってきた中学2年生と、始めて1年ちょっとの大人の初心者が「同じ初段」っていうことがありえるだろうか? 段位が「剣道技術の目安」であるとするならば、これは明らかに矛盾が生じている。
 遅剣のお父さんにとってもバツの悪い話であり、中学生にとっては「あんなおじさんと同じ段位?」と怪訝顔。それでも同じ全剣連の免状が送られてくる。う〜ん、段位って何なんだろう??

 私も子どものころ疑問に思ったことがある。私が子どものころは、中学生は初段までしかとることができなかった。私が中学生になって初段を取得したところ、あとから始めた父親が、次々と二段三段を受審し、あっという間に私よりも上の段位になってしまったのだ。当然、私と父親が立合えば、私の方が圧倒的に技量が上で勝負になりもしなかったのだが、段位では向こうが上。なんとも理不尽な思いをしたものである。

 また、現行のシステムでは、「中学生は二段まで、高校生は三段まで」となっており、これらの層の「励み」というにはあまりに大ざっぱ。試合のためには目の色が変わる中高の指導者も、審査になると本人任せ。形稽古なども付け焼刃。指導者がそんな姿勢だから、子どもたちも当然、審査に対して情熱をもって取り組まない。子どもの場合は、現行の段位制度が本当に励みになっているかどうかはなはだ疑問である。

 年月は流れて、私もこのようなサイトを運営するようになり、この問題をどうしたものかつらつら思い考えるようになった。そんなとき思いついたのが、段位制を改革することだった。


 この問題に対する私の見解はこうだ。全剣連公認の「少年段」の設置である。少年段は初段から十段までとし、小学生以上18歳未満の誰でもが受審することができるものとする。原則として飛び段は認めないが、年数回行われる審査会において半年以上期間が空けばどんどん上の段位に挑戦することができるものとするのだ。
 審査項目は、「切返し、基本打ち(課題技)、立合い、日本剣道形(あるいは木刀による基本稽古法)」あたりが適当だろうか。やはり、剣道の基礎をしっかりと習熟させることが目的なので、それに沿った課題が望まれるだろう。

 さてここからがポイントなのだが、「少年段は一般段にスライドさせることができる」ように規定しておくのだ。つまり、少年段を持っていた子が18歳以上になった場合、全剣連に申請すれば、それまで取得した少年段を一般段に書き換えてもらえるようにするのだ。たとえば、以下のようになる。

 ●少年段十段    → 一般段四段
 ●少年段八段・九段 → 一般段三段
 ●少年段六段・七段 → 一般段二段
 ●少年段四段・五段 → 一般段初段

のように書き換えができるようにしたらどうだろう。
 少年段七段を持っている場合は、一般段の初段と二段の受審は免除で、一般段三段から受審できる、という考え方にもなる。

 この方法だと最年少で18歳の四段が生まれ、現行の段位制よりも年齢がさがるが、それなりの実力のある高校生はいるもの。若い世代はどうしても目標が試合偏重になりやすい。それゆえ勝負にこだわった剣道の乱れも指摘されている。また、選手に入れない子どもたちにとって剣道へのモチベーションの維持が難しいわけだが、こうしたシステムの確立により意欲的に審査に取り組ませるなど目標の設定がしやすくなることも考えられる。

 もちろん、この一文の冒頭に書いたような気まずさや矛盾も解消されるはずだ。大人の初心者にとって中高生といっしょの審査は何とも気まずいのだ。大人の初心者にとっても、こうしたシステムはありがたいことだろう。


 もう一つの大きな柱は、「アマチュア段」の設置だ。将棋や囲碁の世界では、棋士が持っている段位とアマチュアが取得できる段位には明確な違いがある。アマチュアの高段位でもプロの低段位以下の実力しかないのが現状だ。
 段位が剣道修行の励みであるとするならば、一般の愛好家がもっと気楽に段位を受けに行けるようなシステムづくりが望まれるのではないだろうか?

 また、アマチュア段では飽き足らないマニアの人たちや、より高みを追求したい人たちにはプロ段への挑戦も認めるようにしたらどうだろう。指導者や専門家を志す人は当然、こちらの段に進んでいただく。この場合は、スライドなどではなくプロ段の初段から受審していただくのがいいだろう。故に戦前の段位のように初段から五段くらいまでが適当かも知れない。可能であれば、別項で提案したような「段位更新制」をプロ段では取り入れてもらいたいものである。


 とまぁ、こんなことを考えているわけだが、いかがなものだろうか?
 全剣連さん、一度まな板の上に乗っけてみてはいただけませんかねぇ。

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