少年用剣道具への提言

使いやすいファースト剣道具の試作について


 剣道具・・・、我々剣道に携わるものにとって、剣道具は欠かすことの出来ないアイテムである。ある程度、剣道を修業し「自分の剣道」が出来てきた者にとって、剣道具選びは「自分自身の剣道へのこだわり」にも匹敵する。材料・縫製・仕上がりはもちろん、蜀江や糸の色に至るまで、細かく吟味し注文する。そして、愛着をもって使用する。まさに、武士と鎧兜の関係といっても過言ではないだろう。

 しかし、こと子供用の剣道具を考えた場合、我々はあまりに無頓着になっていないだろうか? 剣道具屋に並んでいる少年用剣道具のほとんどが、決められたデザインであり、使い勝手も決していいとは言い切れないように思える。洋服を考えた場合、親はごく自然に子供に可愛らしい腹を着せようと考える。また、子供服のラインナップもそのニーズに応えうるものがたくさんある。しかし、剣道具にはない。なぜだろうか???

 女の子には女の子用の可愛らしい色使いやデザインのものがあってもいいのでは? 男の子には、勇ましい感じの剣道具があってもいいだろう。子供の剣道具こそ、機能性と安全性がクリアされていれば、もっと夢のあるものが出てきていいはずだ。

 この度、エベレスさんこと秋田の東海林剣道具店の東海林一義さんと掲示板で検討を重ね、愚息にオーダーメイドの剣道具を作成していただいた。デザイン的には、それほど目新しいものはないが、随所に、エベレスさんのこだわりが隠されている。まずは、その画像をアップしたのでご覧いただきたい。

 エベレスさんからの、コンセプトについての細かい解説をいたいたので以下に掲載した(^^)     Hide.

エベレスさんのHP
「スグレモノ剣道具s-magazin」
エベレスさんの掲示板
「堪らんボ〜グ研究会」
甲手

防具のなかで、良し悪しが良く解りやすいのが甲手。
判断は簡単!
「使いやすいか・使いにくいか」
「長持ちするか・壊れやすいか」

正也くんの甲手のポイントは、
指の長さが合うこと、
甲手の中で、指が握りやすい位置にくること、
手首の「あたり」が心地よいこと、
そして、ヒジが充分に衝撃を吸収してくれること。
実のところ、理想的少年用甲手というより、
正也くん専用甲手。
といった仕上がりになってしまいました。

この甲手を作りながら解ったことは、
「鹿革」という素材のすばらしさ。
極力「革」を使わない方向で考えていても、
いまのところ、「使いやすい」を考えると
手の内は「鹿革」に勝る素材は見つかりませんでした。
新しい21世紀型の防具の入り口は、
鹿革に勝る「素材」の研究から始める必要がある。
と改めて認識させられました。

 

垂のポイントは、前帯の感触(適度な柔らかさとフィット感)そして、対磨耗性。
前帯・大垂・小垂の布団系のパーツを充分な厚さを保ちつつ、柔らかく、コシがあり、身体にフィットしやすく、軽く動きやすい仕上げに成功しました。
対磨耗性については、質の良いクラリーノを多用し、
ヘリ、前帯の補強に使いました。

一番の課題は「紐」でしたね。
シワになりにくく、締まりやすい素材の研究が益々必要となってきました。

 

なんといっても、「内輪」上質でしなやかなやわらかい紺反を湯通しして使いました。これは、うちで作製する最高級の面と全く同じものです。

多分かぶり心地はご本人にしか解らないでしょうが、最善のものでしょう!
もちろん、布団の長さ・幅、そしてアゴの寸法にもかなり気を使った力作です。

変わり塗りの胴台を使えなかったのはとても残念でしたが、Hideさんのお好みをお聞きしながら、古風でありながら、少年用にはめずらしい、かわいくて落ち着きのある仕上がりになりました。

一番痛みやすい、胸・胴台のヘリには、取り替え修理もしやすい素材をつかいました。

全体的に通した色のイメージは「藤」と「紺」、「白」を合わせながら、「藤」上品に使って男の子に合った仕上がりになったことはなかなか良い感じでしたね。